第三章

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「あいつだ、行け――」  しばらくして、一台の旧車が駐車場に入ってきた。たしか、『GT380(さんぱち)』と言う名前の単車で、かなり手の込んだ改造している辺り、旧車會の人間だろう。  単車は建物の入口付近で停車。すると止まった単車に近付いて来る、派手な格好をした茶髪の女。 (うわっ、化粧濃いな~) なんて思っていると、車はそいつらの後ろに止まった。 パアアアアアア――  駐車場中に響き渡る騒音。 恋仲らしき二人に向けて、木山さんは何度もクラクションを鳴らし続ける。  当然、二人は此方を見たわけだが、何故か蒼ざめる女の顔。そして、一目散に逃げ出した。 「逃がすか!」  車を降りた高松さんが、あわてて女を追いかける。 あっという間に捕まる女。なにやら激しく揉めながら、こちらへ向かって歩いてくる。 「テメエ、また浮気しやがったな!ほんと、お前はクソだ、クソ」 「あんただけには言われたくない!」  ぎゃあぎゃあと喚く二人は明らかに目立ち、サンパチの運転手は苦笑いを浮かべていた。
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