第三章

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 修羅場を目撃したのはこれが初めて。 高松さんは容赦なく女に暴行。女は泣きわめき、高松さんは暴れ狂う。  当然、コンビニの店員に通報され警察が介入するというまでの騒ぎに。 俺達も止めに入ったのだが、高松さんの怒りは治まらず、彼は女と一緒に署へ連行された。  後日、二人は別れたようだ。人伝に聞いた話だから定かではないが、その事に関してはあまり興味がない。  それよりも、今一番気になっているのは視界に入る爺の存在。どこを見ても、視界の隅っこには必ずあの爺の姿がある。  気味が悪かった。 なぜなら、日に日に爺との距離が近付いているような気がするから。  一昨日は、窓の向こうに。昨日は、部屋の中に。 そして今日は足元に。  しかし、何かをしてくるような素振りは見せず、ただぼーっと此方を眺めているだけ。――くり貫かれたような真っ黒な瞳で。
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