第三章

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「帰る」  俺は一声出し、勢いよく椅子から立ち上がった。 「晴輝!」  突然の事に驚いた太一が、教室から出ていく俺の後ろを慌てて追いかける。 「急にどうしたんだよ?」 「別に、ダルかったから」 「ダルい?……まあ、分かるけど――」  授業中の廊下はやけに静か。そのため、太一の声が大きく聞こえる。 「――重森クソだし」 「うんこみてえな顔してるよな」 「ぶふっ、どんな顔だよ」  重森の悪口で盛り上がり、俺達は大きな声で笑う。 「うるさい!!」  教室の扉から顔を出した教師が、此方に向かって怒鳴った。 「お前がうるせえ!」 なんて言い返し、風のように二人で逃げる。  誰もいない昇降口まで来ると、俺達は腹を抱えて笑った。 『教師の顔が間抜けだった』 と。
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