第三章

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 それでも、すべての責任が自分にあるとは思わない。 ――お袋自身が弱すぎるからこうなったんだ。 親が死んでもなお、俺の頭は自分をよく見せることばかり考えている。 『ザマアミロ』  部屋の隅に突如現れた白い人間。半透明のそいつは、俺を指差し嘲笑う。 その者の声は小憎たらしい恭輔の声に酷似していて、ゲラゲラと下品な笑い方をする所もそっくりだ。 「死んだお前に言われたかねえよ」  それが恭輔だと決まった訳でもないのに、俺も笑いながら言い返す。  この時の俺は確信していたのだ。 “こいつは死んだ恭輔に違いない” と。 幻覚か、それとも本物の幽霊か。 たとえ後者だとしても、相手はあの恭輔。 ぶん殴ってやりたい衝動に駆り立てられる。 『お前がいなければ、お前がいなければ――』 うーうーとうなり声をあげる恭輔が、徐々に迫ってくる。  突然浮かびあがる、血みどろの顔。死んだ直後の姿を思い出し、吐き気を催す。 「く、くく来んな!あっち行け!」 無我夢中で逃げ惑う俺。
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