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「お前、何やってんだ?」
顔をしかめた兄貴が、病室の中を走り回る俺を捕まえて言った。
兄貴には、恭輔の姿が見えていない様子で、親父もまた然り。
と、言うことは、見えているのは俺だけらしい。
爺といい、恭輔といい、最近の俺はどうかしている。
(ねむ……)
お袋の亡骸の前で、俺はあくびを噛みしめた。
***
お袋の葬式は物静かに行われた。
棺桶に入れられる別れの切り花。大好きな花に囲まれたお袋は、頬を緩ませ嬉しそうに笑っている。
少なくとも、俺にはそう見えた。
最後の別れを終えた後、棺桶は霊柩車(れいきゅうしゃ)へと運ばれる。
遺影を持つのは俺の役目。
笑顔のお袋を胸に抱え、俺は泣きながら歩く。
「可哀想にねえ……」
親戚のおばさんが俺の肩を抱いて慰めの言葉をかける。
(くせえ……)
漂ってくる加齢臭。不快な臭いを堪えつつも、俺は涙を流し続けた。
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