第三章

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――はずだった。 「お前――」 騙す段階の途中で、太一がヘマをしたのだ。警察にバレるのも時間の問題。 一番危ないのは、前科持ちの高松さん。捕まれば、間違いなく刑務所行きだ。 「すいません!すいません!」  血まみれの親友が、床の上で泣いて謝る。 「“すいません”じゃ、すまねぇんだよ!」  しかし、止まない暴力。先輩達から袋叩きに遭っている親友を前にしても、彼を助けることさえ出来ない。  恐いのだ。太一を助ければ、俺も同じ目に遭わされるんじゃないかと。 「ああああああ――!」 ポタリ……  太一の悲鳴が上がった直後、床の上に何かが落ちた。 目を凝らしてみると、定まってくる物の正体。――耳だ。
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