第一章 二部

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「あいつ、絶対何か企んでるぞ」  先に抜け穴を通った太一が声を潜めて言った。  奴が悪い事を企んでいる事など百も承知。それでも取りかえそうとはせず成すがままになっていたのは、ただ単に面倒だったから。  それに、無駄な体力を使いたくない。 「ああ、だろうな」 と、俺はコクリと頷き抜け穴を潜り抜ける。 「ふざけんな!!」  一息吐く間もなく歩いていると、深々とした静けさを破る怒号が建物内から聞こえてくる。  その声の主は、間違えなく高松さん本人。怒り狂う彼の姿を想像するだけで背筋が寒くなる。 「ど、どうする?」  立ち止まった太一が顔を蒼くし唇を震わす。 「どうするもなにも、いかねえとやばいだろ」 「でも──」 「なら、帰れば?」 煮え切らない態度の太一に業を煮やした俺は、わざと冷たい態度をとった。  正直言って、俺も行きたくない。しかし、後々面倒事に捲き込まれることを考えると、今行った方が確実に吉。 それに、高松さんは嘘つきとすぐに逃げだすような腰抜けには容赦ない。だから、嫌でも顔を出しておく必要がある。
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