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俺は、何の事かさっぱり分からなかった。
それもそのはず。俺は恭輔に何もしていない。むしろ、されたのは俺の方。
「は? は?」
地面に押し倒された俺は、“訳が分からない”と、首を傾げてばかりだ。
「あんな状態になってるって分かってたら、お前から奪わなかった──」
悔しそうにそう言った恭輔がギリッと唇を噛む。
「お前を嵌めようと思ってたのに……なんでだよ!!」
俺の上に馬乗りになった恭輔は我を忘れ、ひたすら俺の顔を殴った。
頬骨に伝わる振動と、舌に感じる錆びた鉄に近いそれ。同じ間隔で来る強い痛みが、堪らなく不快だった。
「勝手にお前が盗ったんだろ!!」
俺は無意識の内に反撃していた。特別な恨みは無かったが、一方的に殴られている事実を見過ごせるほど俺は出来た人間ではない。
第一、悪いのは恭輔の方。
俺は悪くない。と、無我夢中で奴の腹や顔を殴った。
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