第一章 二部

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「痛っ──」  ふと、感じる右手の痛み。服で擦れたのか、手の甲が擦れて皮膚に隠れていた肉が剥き出しになっている。拭っても拭っても肉の表面に浮き出る赤黒い血液は消えない。 「…………」  とうとう、恭輔の悲鳴が消えた。 (死んだのか?) ドクドクと心臓が荒く波打つ。 「お前──」 高松さんと同級の安藤秀(あんどうすぐる)さんが、目を見開いて声を出した。 「あ? ばーか、死んでねーって。つうか、そんな目で見んな」  殺伐(さつばつ)とした空気の中、誰もが恭輔の死を覚悟していた。しかし、事を荒立てた当事者である高松さんはケロリとしていて、罪悪感はゼロ。 「こんなんで死ぬ奴は、俺の仲間には要らねえ」 そう高々と笑う彼は、恭輔の身体を思いっきり蹴飛ばす。 まるでサッカーボールを思わせるそれは、ゴロゴロと地面の上を転がっていった。
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