第一章 二部

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 この時、恭輔はまだ息をしていた。 ヒューヒューと聞こえる小さな呼吸の音が、奴が生きている事を証明している。  しかし、誰一人として恭輔を助ける者はいない。それどころか、今にも息絶えてしまいそうな恭輔を完全に放置して、建物の中へと入っていく。 「ハル、早く来いよ」 高松さんに恐怖して退いていたはずの太一も、涼しい顔で俺を呼んでいる。 「先行っててくれ」 「は? なんで?」 「少し休んでからいく」 「ふーん、分かった」  とてもじゃないが、俺は皆と一緒に酒を呑む気にはなれなれなかった。  目の前で人が死にかけているというのに、先輩達や友人、そして親友でさえ何もしないというのは、人として何かが欠けている。 かと言って、いまさら恭輔を助けようと言う気なんて更々起きなかった。  確かに、俺にとっての恭輔は友人の中の一人だ。だが、高いリスクを背負ってまで助けたいと思えるような間柄じゃない。と、俺はこの場ではっきりと言える。 なぜなら、俺は恭輔が嫌いだ。ゴミに集る汚い生物と同じくらいに。
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