第一章 一部

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「働く。そんで、ビックになる」  そう答えた太一の目はキラキラとしていた。まるで、まだ見ぬ将来に期待を抱いて夢を見ている子供のように。 「それなら、大丈夫。学校辞めなくても、お前の頭ん中はすでにビックだよ」  俺は金色の髪を掻き上げ、笑った。 別に親友を馬鹿にしているわけではない。本当は、夢を持っている太一が羨ましくて妬んでいるだけ。 (嗚呼、俺って女々しい奴) ますます、笑いが込み上げてくる。 「なんだよ、それ」  隣を歩いていた太一が、急に姿を消した。 振り向くと、校門を出る手前で立ち止まったまま、しかめっ面でこちらを睨んでいる。 「わりいわりい(悪い悪い)、冗談だって──」 ギラリと光る茶色い頭。太一の茶色い髪をとめた金属製のカチューシャが、光を反射して光っているように見えた。 「うっそー」  ニヤリと意地悪く笑った太一が走ってくる。ガラリと変わった奴の表情は、雲一つ無い真昼の空のように明るい。 「腹へった。飯食いに行こうぜ」 「金ねえよ」 「マジで? つうか、俺も三百円しかねー」 「お前もかよ。ああ、金ほしい~」  他愛の無い会話をする俺達の遥か上を、飛行機が飛んでいた。
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