第一章 三部

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「ちょっと煽られただけでビビるくらいなら、意気がった車なんかに乗んじゃねえ!!」  そのまま素通りすれば良いものの、わざわざ車を止めて文句をいう始末。助手席の窓を開けて怒鳴り散らす男に、エアロなど装飾の施された車に乗った男性達は顔を蒼くしてこちらを見ている。 「いいか? 次舐めた真似してみろ、そのポンコツごと潰すぞ!!」  捨て台詞も最悪だった。 フンと鼻を鳴らした男は満足そうに笑っていたが、俺と太一は身体を縮こませて黙りを決め込む。  高松さん程ではないが、この人もタチが悪い。 密かに俺は、『逆らわない方が良い人間リスト』に彼も加えた。 「哲二さんは、俺の憧れの人でよ──」  廃墟に着くまで永遠と武勇伝という名の自慢話を聞かされた。大まかに言えば、鑑別所や少年院での事。後は、『悪いことをしてきた俺様かっこいい』的な話など、全体的に下らない内容だった。  他人の自慢話ほど退屈なものはない。 表面上は彼をおだてていたが、心の中では早く終わる事ばかり願っていた。
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