第一章 三部

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 灰の入ったバケツはそんなに重くない。ただ、雑木林と焼却炉の間を行ったり来たりする事が面倒なだけ。 (……だる(ダルい)) 数歩前を歩く良平君の背中を見ながら、頭の中でぼやく。 「あいつら恭輔が死んだこと事知らねえみたいだから、こうするしかなかったんだ。 ──ごめんな」  ふと、良平君が呟くように言った。 (もしかして聞こえてたのか?) その真相は定かではないが、彼の声はどこか寂しそう。 落ちぶれたとばかり思っていたが、どうやら優しい所は以前のままのようだ。 「俺が良平君と同じ立場だったなら、同じことしてますよ。それに俺、全然気にしてないし。 ──灰を運ぶくらい楽勝っス」 「……そっか」  俺は良平君に取り繕うよう、笑顔を作って見せる。しかし、良平君の横顔はどこか寂しげ。 彼自身、恭輔を助けられなかった事に対しての罪悪感を抱いているのかもしれない。  そう感じた俺は、死んでも尚他人に迷惑をかける恭輔を鬱陶(うっとう)しく思った。
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