第二章 一部

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「これ──」  苛立つ俺に怯えたお袋が食器棚の引き出しから出してきたのは、輪ゴムで止められた大量の封筒。赤、ピンク、黒、白、様々な色が入り交じった封筒の束は、ざっと十数センチ程の厚さがある。  その全てが、俺宛ての手紙。一枚引き抜いて見てみると、 『晴輝君へ』 表に小さな丸い字で俺の名前が標記されていた。  字からして、送り主は間違いなく女。わざわざ手紙を寄越してくるような女友達などいない俺は、内心ドキドキしながら手紙を裏返す。  隅っこの方にこれまた小さな字で書かれていた女の名は、『マミ』。覚えのある名前に驚愕し、思わず床へ放り投げる。 ──あの女だ。以前、サイト内でやりとりをしていたしつこい女に違いない。 と、力ずくで手紙の束を引き千切る。 『なぜ、名前や住所を知っているのか?』 それを考えるよりも先に、俺は気味の悪い手紙の束を捨てておきたかった。  こんなにも拒んでいるのに、どうしてこうもしつこいのか。 ストーカーのような行動を取る女に、俺は嫌悪感を覚えてならない。
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