第二章 一部

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「……もしかして、ストーカーされてるの?」  疲れた顔のお袋が、控えめな声で訊いてきた。 第三者から見ても異常な事態らしく、お袋が心配そうに俺を見ている。  今まで俺には見せず、黙って引き出しへ仕舞っていたお袋の優しさがひしひしと伝わり、なんとも言えない気持ちが俺の心を支配した。 「うるせえな!! そんなこと聞く前に捨てとけよ!!」 が、しかし、俺はお袋の頬を右手で思いっきり打った。  そして、お袋に向かって言った。 「さっさと“小遣い”よこせ」 と。 「……うん、ごめんね」  頬を押さえたお袋が、慌てて寝室に消える。 「はい、大事に使いなさいね」 すぐに戻ってきたお袋は、俺に千円札を三枚渡した。 「たったの三千円かよ!! こんなんじゃ何も出来ねえし!!」  俺は親が汗水垂らして稼いできた金をクシャクシャに丸め、床に叩きつけた。 『その三千円ですら稼げないくせに何が“たった”だ』 親父や兄貴が居れば間違いなく怒鳴られているに違いない。  たが、今家にいるのはお袋のみ。わがままし放題の俺を叱れるような人間はあいにくいない。
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