第二章 一部

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「そ、そうよね」  丸まった札を拾い上げたお袋は、財布から折り目のついていない綺麗な一万円札を出してきた。 「──でも、手元にはこれしかないの」 「あっそ」  思わぬ大金に目が眩んだ俺はその理由も聞かず、お袋の手から札を乱暴に奪い取る。お袋は小さく声を出していたようだが、気にも止めずに急いで靴を履き家を出た。 「クソッ、ババアのせいで時間がねえ!!」  猛スピードで階段を駆け降り、町営団地の駐輪場に止めてあったエイプに飛び乗る。先日、燃料を満タンになるまで入れたのでガス欠になるような心配はない。 キュルルルル──  エンジンをかけると高めの乾いた音が辺りに轟き、花壇の手入れをしていた年寄りの注目浴びた。 しかし、そんなことなどお構いなしに、俺はアクセルをひねり単車を動かす。  エンジンの回転数が上がると同時に、クラッチレバーを握り左のペダルを蹴り上げギアを変更。徐々に走行速度が上がっていくものの、それでも時間内につけるかどうかは定かではない。
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