第二章 一部

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 抜け道を通り過ぎ、開けた道を走っている最中。先程とはうって変わって、俺の後ろはやけに静かだった。  見なければいいのに見てしまうのは、よく聞く恋の戦法と同じ。いくら怖くても、気になるものは気になるのだ。  俺はバックミラーの向きを少しだけ変え、爺の様子を恐る恐る確認。しかし、何度見てもバックミラーに爺の姿は映し出されていない。 (さっきのは何だったんだ?)  ヨボヨボの爺さんがバイクの尻にしがみついていたなど、誰が信じようか。何度思い返しても、アレは実に不可解な現象。 『きっと疲れていたせいで、幻を見ていたに違いない』 そうやって結論付ける事で、俺は自分自身を安心させようとしていた。  ところが、バックミラーを元の位置に戻そうとした際、俺はとんでもない光景を目の当たりにした。 ペチャッ──  燃料タンクに張り付く赤い液体。前方から、何か塊のようなものが転がってくる。 キィィイイ──  前を走っていた大型トレーラーが急ブレーキをかけた為、とっさにブレーキをかける。 「うあああああ──」  勢いよくトレーラーを降りた若い運転手の男は、なぜか悲鳴を上げ年甲斐もなく泣きわめいている。
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