第二章 一部

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 トレーラーの前に人だかり出来て始め、何やら話し込んでいる野次馬。これはただ事ではないと思った俺は、側まで行こうとバイクのハンドルを握った。  その瞬間、何かがぶつかったような軽い衝撃を足に感じた。  俺が蹴飛ばした得体の知れないソレは、地面の上をゴロゴロと転がっている様子。 ふと目線を落とせば、見ず知らずの爺と目が合った。 (なんだ、人か──) と、安心して動き出そうと思ったが、ある事に気付き慌ててハンドルから手を放す。 「人!?」  俺は声を張り上げ、もう一度同じ場所へ視線を戻した。 すると、また爺とかち合う視線。何かを言いたそうにしているが、やけに背の低い爺は何も話さない。  それもそのはず。なにせ、そこに存在しているのは頭部だけ。つまり、身体が無いのだ。  普通に考えて、それは異常な事。しかし、更に怖い事が俺を待ち構えている。 「なんで──」  俺はゴクリと息を呑み、力一杯目を見開いた。  衝撃的な出来事に、俺は驚きを隠せない。 なぜなら、その爺さんの顔が、先程見た爺の顔と酷似(こくじ)していたからだ。  と、なると、燃料タンクに付着したのは間違いなく血液。 生々しい色のそれに触れると、指を追うようにうっすらと赤い跡が残る。 「俺の人生終わりだああああ──」  自暴自棄になった髭面の運転手は、ガンガンと頭を車へ何度も打ち付けていた。
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