第二章 一部

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(どうせ、金の話だろ)  俺は兄貴から掛かってきた電話を取ろうとは思わなかった。 普段から俺を目の敵にしている兄貴から掛かってきた電話に出てもよかった思いでなど1つもない。 だから、何度も兄貴が掛けてこようが気付いていないフリを決め込む。 「お、あの女可愛くね?」  車の助手席に乗っていた高松さんが、不意に声を出した。 「晴輝、行ってこいよ」 「……え?」 「“え?”じゃねえ。お前がナンパしてこい」 「は、はい──」 車が止まったのを確認すると、俺は車から降り女の元へ走る。 これはよくある事。突発的に言い出すのは、高松さんの悪い癖だ。 「今、暇?」  声を掛けた相手は、リスのように真ん丸な目をした金髪の女。ぷっくりと膨らんだアヒル口と豊満に育った胸は、男を誘っているようにしか見えない。 「え? 今? 今は暇だけど──」 「連れがいんだけど、これから遊ばね?」 「いいよ」  正直な所、断られるかと思っていた。が、しかし、女はすぐに承諾し俺の後をついてくる。  これから自分に降りかかるであろう出来事を知らずに付いてくるこの女は、愚かと言うより間抜け。 (ちょっとは警戒しろよ) 俺はあまりにも無防備過ぎる女に対し、密かにそう思っていた。
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