第二章 二部

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 昔の兄貴は、質(たち)の悪い不良だった。今では真面目に生きているが、つい最近までは毎日遊んで暮らしていたような人間。 『自分の事を棚に上げて、よくもいけしゃあしゃあと俺を説教出来るもんだ』 と、俺は殴られた頬を押さえつつ、憎たらしい兄貴を激しく睨んだ。 「お前達、近所に迷惑だからやめろ!!」  熱り立った兄貴を止めたのは、ガッシリとした体形の親父。普段大工をしている為、わりと筋肉質で力もある。  俺と兄貴を引き離した親父の顔は、まるで仁王像のよう。 何をそんなに怒っているのか、二人は俺を激しく睨んでいた。 「お前、母ちゃんが大変な時になにやってたんだ!!」 「は? お袋が大変?」  親父がなんの事を言っているのかさっぱりだった。 確か家を出る前のお袋は元気でピンピンしていたはず。  俺は親父が言っている事を全く理解できず、小首をかしげて聞き返した。
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