451人が本棚に入れています
本棚に追加
『俺は悪くない』
自分自身に言い聞かせるよう、頭の中でその言葉を何度も繰り返し言う。
恭輔、爺、女、お袋。立て続けに起きる悪い出来事から、俺の頭は逃げたくて逃げたくて仕様が無いのだ。
ベッドの上で横になった俺は、ジッと目を閉じて眠る準備をしていた。しかし、一向に眠くならず、刻々と過ぎて行く時間。カチカチと時間を刻む針の音がやけに煩かった。
気がづいたら、もう朝。まだ夏休みを終えてない為、学校へ行く支度をする必要も早起きをする必要もないのだが、妙にそわそわして身体が落ち着かない。
「仕事行くからな。帰りに母ちゃんの所へ寄って来るから遅くなる」
部屋の前に立つ親父は中へ入っては来ず、壁越しに言った。
「……ああ」
俺も壁越しに返事。どうにも、ドアを開けようという気にはなれない。
「早く起きて飯食え!!」
けれど兄貴は違った。
バンッと激しく扉を開け、堂々とした態度で中へ入ってくる。
返事は不要。
「食わねえと殺す」
と、言うより、兄貴は聞く耳を持たない。
最初のコメントを投稿しよう!