第二章 二部

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 自由が欲しい、自由になりたい。 自由に空を飛び回る、あの燕(つばめ)がうらやましい。  ひぐらしが鳴く中、人通りの少ない道を一人歩く。行く宛はないが、一向(ひたすら)歩き続けた。 「…………」  暫く歩いていると、道の向こう側から犬を連れた老夫婦が歩いてくる。 横を過ぎる際にじいさんと目が合ったが、俺はサッと目を逸らし見ていないフリをする。  あれ以来、爺(じじい)という爺の顔を見れないでいる。 『トラウマ』 と言った方が正しいか、どうしてもあの爺の顔が重なって見えるのだ。 「どうかしてるよ……」  俺の独り言は車の騒音に掻き消され、溜め息は時折吹く風に乗ってどこか遠くへ飛んで行く。 「あれ?」  ふと気が付くと、例の抜け道のど真ん中に俺は立っていた。何の因果か、今居るのは爺が立っていたあの場所。 「ううっ、寒━━」  急に吹き荒れる突風。夏だというのに、ひんやりと冷たい風が俺の背中を撫でる。
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