第一章 一部

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 情事を終えた後、先輩の連れが運転する黒のワンボックスカーは人通りの少ない峠へ向かった。俺達の間では、その峠を『女のごみ捨て場』と呼んでいる。 「くっせえな~」  道路から逸れた舗装のなされていない山道の途中で止まった車。トランクのドアを開けた中学生の男が、鼻をつまんで言った。  そして、足腰立たないくらいにフラフラの女をトランクから引きずり降ろす。 「…………」  女はすでに正気に戻っていたが、喋る気配は無い。ぬけ殻のように横たわる女に、俺は少しだけ罪悪感が沸いた。 「マ●汁ダラダラ、ごちそうさん」  女の内股から流れ落ちる、白い液体。 助手席に乗った高松さんが、車の窓開けて言った。  ゲラゲラと辺り轟く下品な笑い声。満足そうな顔をした高松さんは、最高に機嫌が良い。 「テメー、誰かにこの事ったチクったりでもしたら、お前もお前の家族も殺すからな? ──わかったんかよ? ユキチャン」  女の財布から抜き取った身分証を手に持った彼が、女に言い聞かせている。 「…………」  返事がない。そのせいで、見る見る内に高松さんの顔が不機嫌になった。 (早く、“はい”って言えよ)  俺は、睨むように女を見ていた。 何故なら、高松さんに八つ当たりされたくないから。とばっちりはごめんだ。
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