第二章 二部

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「おやおや、風邪でも引いたんかね?」  くしゃみをした俺に、誰かが声をかけた。 『先程まで人の気配すら感じなかったのに、どうやって現れたんだ?』 と、小首を傾げ振り向くと、また爺が居た。 (昨日の爺に良く似た爺さんだな) 何も答えないままその爺を直視していると、 「恐ろしいものでも見ていたようだねえ」 全てを知っているかのような口調で、そう言った。 「は?」 「そんな顔しとるよ」  小首を傾げて爺を見ていると、爺はクツクツと喉を鳴らして俺の横を通りすぎる。  笑い方もそっくりで、 (同じ奴だろ) と、思わざるえない。 「四度目は無いよ」  ふと、爺が呟いた。 ハッとして爺を見るも、奴はもう此方を見ていない。リュックを背負ったまま、出口に向かってをゆっくりと歩いていく。 「どういう意味なんだよ!!」  俺は何度か叫んだ。しかし、返答はない。 「わけわかんねえ……」  結局、理由を教えぬまま爺は消えていった。
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