第二章 二部

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「晴輝君、本当にありがとう」  ビラを配り終えたのは昼過ぎ。同じ言葉を連呼するおばさんが、“お礼に”と、手作りのおにぎりと冷たい缶ジュースの入った袋を俺に手渡す。  数時間も働いて、報酬はたったのこれだけ。 「いいよ、いいよ。“友達”だから」 と、愛想良く返事するも、内心がっかりしていた。 (割りに合わねえ……)  おばさんとはその場で別れ、俺はもらったばかりのおにぎりを頬張りながら町中を歩く。  味は、まあ普通。ただ、少しだけしょっぱい。 要らなくなったサランラップを地面に捨て、おにぎりの残りをジュースで喉に流し込む。  おにぎりも、ジュースも、あっという間に無くなった。 俺の手元に残ったのは、何の役にも立たない空き缶のみ。 (どうせなら金くれよ) と、罰当たりな事を考えつつ、その空き缶をゴミ箱に向かって放り投げた。
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