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「い、いや……あの……その━━」
両手で鼻を押さえたクロさんは酷く焦っているようだった。
指の間からぽたりぽたりと血液が滴り落ちていることにも気がつかず、それらしい言い訳を考えるのに必死。
“痛みから逃げたい”と、思う気持ちは痛いほど分かる。だが、“逃げる方法がない”と、いうのが今の現実。
『なにせ、“自分を中心に世界が回っている”と、思っている人ですから』
誰かがそう言ってしまえば、彼の努力は完全に無駄になる。
「哲二、少し落ち着けよ。こいつも悪気があった訳じゃないだろ」
「だから、なんだっていうんだ? 悪気があろうがなかろうが、俺を馬鹿にしたことにはかわりない。
お前、自分を刺した奴が“悪気があって刺した訳じゃないから許して”って言ったら、笑って許せるんか?
マジで、すげえなお前。誉めてやるよ━━本当にそれが出来るんならな」
よかれと思って言った言動のおかけで、高松さん標的がクロさんから安藤さんへと切り替わった。
さすがの彼も、止めに入った安藤さんを殴るような真似はしないが、言っている事が少し異常。
「それとこれとでは話が違うだろ」
「どう違うって言うんだ? 全く同じだろう
が」
高松さんは終始不気味で、張り付けたような笑顔を浮かべている。
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