第二章 二部

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 楽しい時こそ、時間の流れは早く感じる。  あっという間に終わった夏休み。また地獄の学校生活が始まる。 「提出物を全く出していないとは――。  それに、なんだその髪の色は!」  ガヤガヤと騒がしい職員室で、担任の中田(なかた)が俺の頭を指差し怒鳴り声を上げた。  提出物とは、言わずとも宿題のこと。馬鹿を絵に描いたような熱血教師の中田は、俺や太一を更生させようといつも必死に熱弁してくる。 「お前は青春時代を無駄に過ごしている!」  まだ夏の暑さが抜けきれていないというのにもかかわらず、中田が暑苦しい事を言い出した。 (お前達はいいよな。涼しい部屋に居れてさ――)  もちろん、時代遅れの台詞を聞くような耳は、あいにく持ち合わせていない。適当に“はいはい”と相づちを打つだけで全てがまるく収まる。――はずだった。 「中田先生、出来損ないに何を言っても無駄ですよ」  ずれた眼鏡を人指し指で元の位置に戻した男が、ふんっと鼻を鳴らし言った。  国語担当の重森(しげもり)だ。 いつも俺のような人間を見下し、馬鹿にしてくる嫌みな奴。真面目を絵にかいたような容姿の重森は、性格の悪さで言えば天下一品だ。
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