第二章 二部

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 誰かがジュースでもこぼしたのか、俺の靴箱の周りに水溜まりが出来ている。  誰かに恨まれる覚えは沢山ありすぎて、犯人が誰なのか皆目見当がつかない。 (いつもパシっている永原あたりか) 頭の中で犯人像を思い浮かべながら自分の靴箱を覗くと、物欲しそうな表情をした猫と目があった。 「人の下駄箱に入ってんじゃねえよ」  猫嫌いな俺は、すぐに下駄箱から猫を引きずり出す。野良猫にしては大人しく、やけに軽い。 ポタ……ポタ……  どこからともなく、水が滴り落ちるような音が聞こえる。それも、間近くで。  しかし、昇降口に手洗い場など存在しない。かといって、外は嫌になるくらい天気が良い。 ――原因はいったい何なのか。 と、首を傾げて考えている最中、ドサッと地面に何かが落ちた。 「ひっ――」  何も考えずに見たのが、間違いの始まりだったのかもしれない。  ぶらりぶらりと揺れる、宙ぶらりんになった凹凸状の管。床の上に落ちたのは、脂身の付いた紅い塊。
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