第3章

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「じゃあ仕方ないわね」 そう言って母はリビングから出て行った。 最近、母の落ち込んだ様子をよく見る。 理由は私だ。 この顔を見るたびに私は胸が痛くなる。 父は私が小さい頃に亡くなった。 とても優しく大らかな人だったらしい。 父と遊んだ記憶すらない程小さな頃の事だった。 それからずっと母は一人で私を育てて来た。 自分で言うのもなんだが母はちょっとズレてるがかなり美人だ。 ご近所でも有名な程に 私も大きくなって一度尋ねた事がある。 なんで再婚しないの?と 「お父さんよりも優しい人がいればね」 そう言った母はとても良い笑顔だった。 多分現れないだろう。 私はなんとなくそう思った。 母さん。ごめんね。私頑張るから。 ガチャリという扉を開く音に続いて母がリビングに戻ってきた。 「出て行け」 片手に私の衣服等が入っているであろう大型キャリーケースを持って。
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