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しかも、厄介なのは、陣平の精神の本体は、ここにはない。
仙界にある。
いじれるのは、コピーである今の体の中のデータだけで、もし、再度、肉体を再構成したときには、また、別の人格が現れる。
できるのは、当面の処置、ということだ。
米本に瀬織は、夜のうちに連絡を入れた。
話を聞いて、米本は明日行くと約束した。
米本は、朝の9時からやって来た。
スラリは起きてこれない。
昨晩、眠れなかったということで、寝ている。
瀬織は、1つ、忘れていた。
自分が男を中毒にするように、陣平も、女を中毒にしてしまうようになっている可能性がある。
米本がリビングに入ると、それまで高校の教科書を読んでいた陣平は、喜んで米本の元に駆けつけた。
「お義母さん、久しぶり。」
米本は、陣平の頭を撫でながら、
「相変わらず重症ね。」
と、瀬織に言う。
さっそく、陣平の頭にダイブすることにした。
陣平を陣平のベッドに寝せて、
「しかし、ほんとに手のかかる子だわ。
再生のたびに毎回、潜るしかないかしら。」
と、ぼやきを口にしながら、頭をつけた。
ダイブする。
案の定、陣平の自我を包んでいた防壁が、さらに損失している。
考えようによっては、残っていたのも奇跡だ。
(私に、似たような防壁を、作れるかしらね。)
米本はそれを試みた。
他の意識を見ると、今まで満たされなかった不満や、憎悪も、ダダモレしており、それらを少しずつ米本は減らしておいた。
子供っぽいのは、親から早く離された反動なのは明らかだ。
(でも、性格の本質は、変えられないから、そこは、うまくやってもらわないと。)
実際、米本のダイブ中に起きてきたスラリは、かなり消耗していた。
消耗しているが、
「主人のところに行きたい。」
と、言い出した。
陣平中毒になりかけている。
このままでは、嫁達は、廃人になってしまう。
ことは、急を要する。
中毒になると、とにかく、頭のなかに陣平しか考えられなくなる。
瀬織は、米本ほど器用にはできないが、スラリを寝せて、ダイブし、意識から、陣平を取り除いた。
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