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公介も、口を出した。
「わかりにくいでしょうが、
例えば、過去のサユリの親を、過去で私が殺めたとします。
当然、未来のサユリの存在は無くなるように思いますが、未来に行ってみると、親が死ぬ前に生まれていたことになってしまい、誕生日が変わるくらいで、サユリは存在している。
しかし、親が殺された事実は残ってます。」
サユリは、抽象的な説明を加えた。
「時間というものを認識する存在、つまり人間は、時間に殺されない、ということが、私たちの結論です。」
ハカセは、頭のなかで、いくつかシミュレートをしてみる。
「うーん、まあ、確実性に欠けるが、彼らが協力してくれれば、我々の立場では、損することはない。
これは、間違いない。」
瀬織は、話を変えた。
「精獣については?」
サユリは、ナデシコを見た。
「ナデシコこと桜さんは、精獣をご存じかと。」
ナデシコは、ようやく少し飲み込めた。
「あれは、邪法中の邪法、禁断の法として、伝承は残ってるけど、近代で実際に用いた例は聞かないですよ。」
サユリはそこはわかっている。
「我々は、状況が特殊でしたから。」
と、言うと、公介と共に立ち上がる。
公介は、サユリの鼻に食いついた。
ぬるゅん、というイメージで、サユリの体が、公介の口に吸い込まれる。
見ていて気持ちのいいものではない。
シズカが
「うわあ、」
と、もらした。
ドジコは
「ほへー、」
と、身を乗り出す。
そうこうするうちに、公介のなかに、サユリはすべて飲み込まれた。
その間、3秒くらいだ。
公介は、肩をすくめた。
「まあ、こんなところで。」
ナデシコも、見たのは初めてだ。
「見ると聞くとは大違いです。
しかし、あなたが精獣、吸い込まれる側だったのでは?」
公介は、苦笑した。
「未来では俺が、過去ではサユリが精獣です。」
ナデシコは微笑んだ。
「とにかく、2人は、御夫婦なのね。」
「未来の方に、あと、3人、身重の妻がいるんですよ。
だから戻らないと。」
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