お嬢さまの初体験。

13/51
前へ
/255ページ
次へ
 わたしは、うん、とうなづくと恐る恐る声をかけた。 「え……えっと……あの。大丈夫ですか?」 「……ああ?」  わたしの声に、その人はうつむいていた顔をあげた。  うぁ……  間近で見ると、顔の皮膚が紫色やら黄色に変わってて更に酷いことが判る。  元はかなりイケメンさんみたい。  傷の無い方の顔半分は、色白で、涼やかな切れ長の目が印象的だった。  そして、怖い。  なんて言うか……その、眼力(めぢから)っていうの?  さっき、ちらっと目が合った時は全然感じなかったけれど、わたしが声をかけたとたん。  まるで抜き身のナイフみたいな視線をじろり、とこちらに投げて来た。 「なんだよ、てめーは、よ」 「えっえ……と、何でもなく。タダの通りすがり、なのですが……  なんか、かなり痛そうなお顔で、ここに座っていらしたので。  もしかしたら、動けなくてお困りなのではないかと、声をかけさせていただきました。  何か、わたしにお手伝いできることはありませんか?」  例えば病院へ行くとか……  そう、口ごもりながら聞けば、そのヒトは「へっ!」と息を吐いた。 「病院! 要らねえよ、そんなもん。  こんな傷、日常茶飯事だ。  オレはここで、ヒト待ってるし!  万が一、病院に行くとしたって、見ず知らずのてめーじゃなく、そいつと行く」 「ですよね~~」 
/255ページ

最初のコメントを投稿しよう!

791人が本棚に入れています
本棚に追加