お嬢さまの初体験。

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「じゃあ、オレが誰かも知らないで、こんなことを……ハンカチを貸してくれたのか?」 「……まぁ」  ……本当に初対面だし、純粋に見てられなかったから、だけど。 『オレが誰かも、知らないで』ってなんか、とっても自信満々な言い草……だね?  傷の無い、無事な方の顔から察するに、本当はかなりイケメンそうだ。  神無崎 裕也さん、かぁ。  もしかして、実は、有名な俳優か、モデルか、歌手か……そういったお仕事のヒトなのかな?  とはいえ、まったく誰も思いつかず、見覚えもなく。  首を傾げれば、彼は突然げらげらげら~~と笑いだし。  次の瞬間、痛ててて! と顔を盛大に歪ませた。 「あ……あの、大丈夫……ですか?」 「平気だって! 大丈夫!  それよりさぁ、おかしくって! めずらしくって!  このオレに、何の利害も求めず、好意だけ寄せてくるヤツ!」 「……はぁ」 「なぁ、なぁ、なんでオレに声をかける気になったか、教えてくれよ!  今日は、酷ぇ面(つら)だし。  このオレがイケメンだから一目ぼれした、ってわけじゃ、もちろん、ねぇんだろ?」  こ、怖い。  何がツボだったんだろう。  しゃべれば顔が痛いだろうに、そんなの全く関係ないみたい。  急に上がった彼のテンションがとても怖くて、言葉も出ず。  かくかくとうなづくと、神無崎さんは、また弾けたように笑った。
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