お嬢さまの初体験。

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 朝。  わたしの一日は、執事の弾くピアノの生演奏を聞くことからはじまる。  何代か前の西園寺家当主が『朝は、お気に入りの曲で目が覚めたい~~』とだだをこねたのがきっかけらしい。  目覚まし代わりに、執事にピアノ演奏させたのが始まりだ。  ん、で現代。  時間になったら楽曲を流す機械を用意しておけば済むのに、お金の余ってる世界屈指の資産家の西園寺家。  いまだに『伝統』とか言って、執事の朝演奏が続いてる。  だから今日も、また。  最高級グランドピアノが設置された、広々としたわたし専用リビングで、生まれた時から世話になっている爺……西園寺家の執事長、藤原宗一郎(ふじわらそういちろう)がピアノを演奏していた。  年を取っても確かな指使いで弾かれる曲は、部屋のロフト……っていうか、広すぎて中二階にしか見えないわたしが寝ているベッドスペースまで、心地よく流れてくる。  ……と言いたい所だけど。  あららら?  今日はあんまし、心地よくない。  妙~~に湿っぽい曲に、おっかしいなぁ? と目を開けば、演奏を終えた爺が、深々と一礼していた。 「おはようございます、理紗お嬢さま」 「うぁ……今日は何する日だっけ!?」
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