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「……ん、だよ。
西園寺のハナシ聞いて、か~な~り、イヤそうに舌打ちしてたのは、フェイク?
ただの痴話喧嘩かよ。
なんだか、オレの知らない所で二人、ラブラブじゃん」
「ま~~な~~」
宗樹は、そらっとぼけた口調で軽く笑った。
「そ~~言ったワケで、俺ガッコの近くの駅までお嬢さん送ってゆくからさ。
裕也は、後からゆっくり来いよ。
待ち合わせは、いつものトコロな~~」
「ん、だよ。
今日は、せっかくお前を待ってたのに別々かよ?」
何だか、神無崎さん、スネてる?
でも、ふくれっ面の彼に『人の恋路を邪魔するヤツは、馬に蹴られて死ぬんだとさ』なんて。
宗樹がひらひら手を振ったら、ようやく。
神無崎さんは『しかたねぇ、また後でな』なんて、頭を掻きながら、人ごみの中に消えていく。
その、目立つ長身が完全に見えなくなったとたん、だった。
宗樹が、変わった。
恋人ツナギしてた手を『ぱ』と速攻で放したかと思うと。
今まで神無崎さんの前で、ゆる~~く笑っていた表情を冷たく引き締め、トゲトゲの一杯詰まった視線をわたしに向かって投げつけてきた。
そして、言った。
「……あんた、莫迦?」
は、はいいい?
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