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たじろいて、二、三歩後ろに下がったら、ごん、と堅いものが頭に当たる。
うぁ、わたし壁際にいたんだ!
驚いた!
全く気がつかなかったと、どきどきしてたら今度は宗樹の手が、わたしの顔のすぐ近くについた。
こ、これっていわゆる『壁ドン』の体勢とかって言うモノじゃっ!
「まだ、何も話してねぇのに、途中で逃げんな、お嬢さん」
「は……はいぃぃ」
かくかくとうなづくわたしに鋭く視線を投げて、宗樹は口を開いた。
「……お嬢さんには、言いたいことも山ほどあるが、まず聞く。
あんたは、一体ここでナニをしてたんだ」
「な……ナニって、ただ学校に行こうと……」
「こんなに朝早く?
まだ、新入生を迎える生徒会役員だって登校するには早い時間だぜ?」
「でも、わたし電車乗るの初めてで、その……切符買うにも自信なく……」
最後の方は、消えかけてしまったわたしの声に、宗樹は「ああ~~」と唸った。
「だから、あんた。人ごみに流されてたのか。
……でも、切符って、ナニやってるんだよ。
事前に、スィカとかカード買っておかなかったのか?
それさえあれば、わざわざ切符買わなくても、自動改札通れるだろ?」
そか。
そういうカードを使っているから、みんな自動販売機に並ばずに、改札の方に流れる感じになってるのか。
……勉強になるなぁ。
思わずしみじみ頷いてから、あれ? と首をかしげた。
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