お嬢さまの初体験。

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 と、思ったのに!  宗樹は、そんなことさせなかった。  まともに視線を合わしてないはずなのに、わたしの腕を絶妙に引っ張ったんだ。  そして、今までいた人気の無い場所から、大勢の人が行き交う通路に出た。  宗樹は、キレイなステップで、人ごみをすいすいとかわす。  すごいなぁ。  なんて、感心しているうちに、さっき跳ね飛ばされた切符の自動販売機前まであっさり着くと、自分のカードで君去津までの切符を買って、わたしに押しつける。 「新入生は、今日学割定期券の書類が配られる。一応これで入っとけ。  あんたの家は、金持ちだから、小銭の出入りなんてどうでも良さそうだけど、無駄にしていい金は無いからな」 「あっ、ありがとう!  今、切符代払う……!」 「こんな人ごみで、カバンなんて開けるな、邪魔だから!  それはいいから、次はこっちだ」  宗樹はそう言うと、まるで社交ダンスをするみたいに、わたしの肩を軽く抱きしめ歩きだす。  そして、今までよりもさらに混んでる改札を突っ切り、あっという間に君去津に行く電車のプラットホームまで、たどり着いてしまった。  おお、なにこれ、速い~~  なんて。  あっさり着いたホームから、機嫌良く後ろを振り返ってみてぞっとする。
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