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空気を求めて、じたばたするわたしを見て、宗樹は深々とため息をついた。
すっと、自分の方にわたしを引き寄せて、流れるように電車の人ごみをかきわけると、奥の方に連れてゆく。
ちょっと……!
扉から離れたら、余計に息苦しいんじゃ……!
ぎゅっと、目をつむった時だった。
ふわり。
意外に涼しい風を感じて、目を見開いた。
「……あれ?」
わたし、電車の車両と車両の間の、連結器の近くに、いる。
しかも、宗樹の胸に、耳をつけた状態で隣の車両へ移動するための扉のほうを見てた。
風、連結器の扉の隙間から……来る?
電車が、がたん、と揺れるたび。
カーブで大きく曲がるたび。
少し、空気の流れが出来る……のかな?
「どうだ……?
少しは、マシ?」
「……う、うん」
宗樹の胸に、耳をつけているから、小さな声が大きく響く。
そして、わたしの答えに彼が黙れば、心臓の音が聞こえた。
宗樹の音だ。
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