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もし、風景に効果音がつくんだとしたら。
どわっ!
……って言う音が似合う量の桜の花に、いつの間にか、包まれていた。
君去津駅で、宗樹と別れてすぐ。
彼の顔が見れなくて。
お化けになんて、会いたくなくて。
足元ばかり見て歩いていて、気がつかなかったけど、ここ!
君去津高校までの道のりの景色はとても、キレイだった。
早足で昇る上り坂に息が切れ、見あげた空は一面、満開の桜の花に埋まってた。
車が一台しか入れないほど細く、かろうじて舗装されているこの道は、高校に行くための裏道に当たるらしい。
登校するヒトも散歩するヒトもなく。
しん、と静まり返った桜並木は、今、わたしだけの特別な景色だ。
「なにこれ……すご……」
伸ばした手のひらに一枚、桜の花びらがふわりと落ちて来て、わたしは思わず、握った手を抱きしめた。
今まで君去津には、願書提出と受験の時に来た。
その時は運転手のついている車だったし。
表は目立ちすぎるから、ここの近所の方から回って来たはずだったんだけど。
その時はこんなキレイな景色が隠れてるなんて、知らなかった。
桜吹雪っていう言葉は良く聞くけど、わたしが見ているこの風景は、まるで桜の花火だ。
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