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どん、と空に上がって開いた花火が咲くように、太く、細く、様々な太さの枝が、真上に、横にすっと伸びている。
その枝の一本一本には、数えきれない数の花弁がついていて、それがまるで花火の中の火の子みたい。
花火が開いた瞬間を、そのまま止めたように見えた。
きれい……
綺麗~~
初めて体験した電車通学の事もすっかり忘れ、花に引き寄せられるように、心の中で『キレイ』を連呼してた。
ここがちょっとキツイ、斜め過ぎる坂だってことも全然気にならなくて。
足取りとテンション高く、桜の坂の天辺まで着いたら今度は、また別の風景がどわっと広がっていた。
今度は、海!
桜の並木を抜けた小高い丘から見た海は、空との境界線がとても曖昧で、わたしの視界は薄桃色から一変、蒼一色に変わったんだ。
「うわ~~」
その鮮やかな色の交代に、思わず、ため息と一緒に声が出る。
そして、無音だった桜並木と違い、海には音があった。
ううん『音楽』があった。
寄せては返す、海の波。
ざざざざっと言う潮騒の音が、誰かの声を……歌を一緒に、わたしの耳まで、連れて来てくれたんだ。
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