お嬢さまは、地味子さま?

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 今まで、一度も聞いたことのない曲で、楽器は……ピアノ、かな?  聞き慣れているグランドでも、アップライトでもない、何だか不思議なピアノの音源を探せば……ステージの斜め下に、宗樹が、いた。  コの字に設置した、三台のキーボードの真中に立って、さっきドラムで演奏していた曲と全く違う曲調の音楽を奏でている。  それは、聞けばほっとする優しい曲調だったけれど。  何年もの長い間、ピアノの練習を真面目にしてないと無理な技が幾つも織り込んだ難しい曲だ。 「宗樹……」  真剣に演奏している横顔が、ふっ……と。  ウチの執事をしてくれている、爺の演奏に重なって……判る。  ああ……このピアノは、彼が、いずれ西園寺家の執事長になる時に使う……もの。  主人の目覚めのために毎朝弾く技だ。  もし、宗樹が執事になるっていうのなら。  今、西園寺にはわたししか子どもがいないから、将来はきっと一人占め、だね。  ……そう、思うと……ちょっと、悲しい。  本当だったら上手でカッコイイピアニストを一人占め出来て『嬉しい』と喜べばいいんだろうけど。  なんだかなぁ。  Cards soldierの演奏、聞いちゃったからなぁ……  今でも十分すごいけど、まだまだ更に上手くなりそうな宗樹の未来と音楽の才能を、わたしと西園寺が奪ってしまいそうで……なにか……ヤダ。
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