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「で、今回の調査や実験の結果はどうなっている?」
何処かの研究室のような場所。
そこには1人の白衣を着た男が、部下のような男にそのように答えかける。
「はい。採取された物に関しては無事、ほぼ100%変化されています。この件に関しては特に問題は無いでしょう。」
部下の男は報告書のようなものを読み上げる。
「問題は『あの森』の侵食状況です。数値に関しては昨日より上がっています。このままでは、我々の世界に影響が出始めるでしょう……なにか、手は打たなくてよいのですか?」
「構わない。今はこのまま、『あの森』の調査を進めてくれ。あぁ、勿論、今まで通り、隠蔽しつつ、ね。」
「しかし、それでは限界が……」
男が何かを言おうとした時、微かに白衣の男が舌打ちをする。
「……そのために、奴らが“アレ”をバラ撒いてんだろうが。例え少し明るみに出たとしてそれはアレを使った奴らの仕業、って事で方がつけられんだろ?んなことも分かんねえのか?」
雰囲気が変わり、部下の男を圧倒する。
「っ!………申し訳ありません。」
「……ふむ。分かればよし。下がっていいよ。後はこっちで読んでおくからさ。」
「はい。……失礼します。」
部下の男は報告書をデスクに置き、研究室を出て行く。
白衣の男はパソコンを操作し、何処かへ繋げる。
「あぁ私だ。例の実験の被験者、えーっと……そう。それだ。彼にやらせてくれ。なーに、どんなことだって危険は付き物さ。
ーーーそれに、例え死んだって、代わりはいくらでもいるからねぇ。頼むよ。」
パソコンの電話を切り、白衣の男は立ち上がる。
そして、妙な形をした『果実』のような物に目を向ける。
「後もう少しだ。もう少しで、『あの森』の全てを知ることが出来る。
そのためには、あの時逃がした『彼等』にも、是非協力してもらわないとねぇ……
フッフッフッ………ヒヒッ、ハッハッハッハッハッ………!!」
不気味な笑いが、研究室を包み込む。
その光景を、金髪の、赤い目をした女性が、悲しく見つめていた。
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