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熱に侵され、潤んだ瞳があった。
桜色の唇からか細い吐息をいくつも漏らし、ベッドのシーツをきつく握る姿はまるで、情事の際に女が見せる姿そのもので――
「周防……熱い…っ」
零れそうなキャラメルブラウンの瞳はそう言ったきり、瞼の裏に隠れんぼしてしまった。
真っ白なリネンシーツにアンティークモカのさらさらした髪が流れる。
「わ、わかった、ちょっと待ってろ。
冷蔵庫から冷えピタ持ってきてやるから」
扇情的な姿に心乱され、彼――周防暁(すほう あきら)は勢いよく立ち上がった。
ワンルームの隅にある申し訳程度のキッチンに備え付けられたこじんまりとした冷蔵庫には、ペットボトルやデザート類がぎっしりと詰め込まれている。
食堂付きの寮生活となれば、こんなものなのかもしれない。ドアポケットに忍ばせてあるパッケージの箱から冷えピタを一枚取り出すと、暁は壁際にある二段式パイプベッドの下段に横たわる幼馴染みの元へ舞い戻った。
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