#9 ハートブレイカー

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コンコンコン。 と背中のドアが軽快にノックされ、身体がびくんと跳ねた。 「もしも~し、ちょっと、みはねさあ~ん?ねえ、話そうよお~。恋バナきかせてよお~」 能天気な月子の声に、喉がグッとなる。 眉間に力を入れて返した。 「やだ。疲れてんの。もう寝る」 「そんなこと言わないでさあ~。せっかくあたし、来てんのに~」 ううっ 身体を固くし耳を塞ごうとした時。 「もういいじゃん魚崎。…続きしよ?」 少し遠めの距離感で、哲太がいう声がして。 「…つまんないなあ。じゃね、みはね」 不服そうに声のトーンを落とした月子。 そして、ぱたん。と閉じられる、向かい側のドアの音。 … よろよろ立ち上がったあたしは、制服のままベッドに倒れ伏した。 数秒、呆然とドアの方を見やってから。 枕に顔をうずめて、ぎゅうっと押し付けた。 大丈夫。 我慢できない嗚咽も、 ため息も涙も、全部枕が吸い込んでくれる。 あと二時間もすれば、千早おばちゃんも帰ってくるし。 それまでには月子も家に帰るはず。
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