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コンコンコン。
と背中のドアが軽快にノックされ、身体がびくんと跳ねた。
「もしも~し、ちょっと、みはねさあ~ん?ねえ、話そうよお~。恋バナきかせてよお~」
能天気な月子の声に、喉がグッとなる。
眉間に力を入れて返した。
「やだ。疲れてんの。もう寝る」
「そんなこと言わないでさあ~。せっかくあたし、来てんのに~」
ううっ
身体を固くし耳を塞ごうとした時。
「もういいじゃん魚崎。…続きしよ?」
少し遠めの距離感で、哲太がいう声がして。
「…つまんないなあ。じゃね、みはね」
不服そうに声のトーンを落とした月子。
そして、ぱたん。と閉じられる、向かい側のドアの音。
…
よろよろ立ち上がったあたしは、制服のままベッドに倒れ伏した。
数秒、呆然とドアの方を見やってから。
枕に顔をうずめて、ぎゅうっと押し付けた。
大丈夫。
我慢できない嗚咽も、
ため息も涙も、全部枕が吸い込んでくれる。
あと二時間もすれば、千早おばちゃんも帰ってくるし。
それまでには月子も家に帰るはず。
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