#2 モモ

9/9
10189人が本棚に入れています
本棚に追加
/557ページ
「ねえ、みはね」 俯いて胸の前で手を組み、親指をくるくる回しながら月子が言った。 「ソウイチにフラれてね、あたし分かったんだ。……ニセでもいい、期間限定でもいい。ほめられた関係じゃなくてもいいから、今、優しく受け止めてくれる人がほしい。……あたしが望んでるのはそれだけなの。女にはそういう時があるのよ」 そんな。 「そんな事言われても、あたしにはわかんないよ」 ぜんっぜん、わかんないよ、月子。 月子は俯いたあたしを覗き込んでくすっと笑うと言った。 「みはねも誰かに恋をして、その恋を失ったらわかるんだと思うよ?…たぶん」 眉間に皺を寄せてのろのろ顔を上げたあたしは恨めしい声で言った。 「アーわかりませんとも。どーせあたし、恋のこの字も知らないクソガキだもん。…恋愛偏差値20あるかないかの、崖っぷち女子だしっ」 月子はくすっと笑うと。 「とりあえず親友には、ちゃんと報告したからね~。えへっ」 「何がえへ、だよ!月子。…さっきの号泣なんだったの?」 月子はきょとんと宙を見て考えてから、忘れちゃったあ、って。 それから人懐こくニコリとして、じゃあねと手を振って門の方向け走り出した。
/557ページ

最初のコメントを投稿しよう!