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「……お~。すげえ。綺麗な月」
「ひっく……ひっ…く」
「今気づいた。みは、ちょっと見てみ」
哲太に言われて、嗚咽を押え込みゆっくり顔を上げた。
穏やかな茶色の瞳が見上げてる視線を、追っかける。
「──!」
まばゆいほどの輝きの金色に、ほんのり紺碧色を抱いた、まん丸の大きな月がそこに掛かってた。
すうーっと心が、洗われていくみたい。
「な。ちょっと降りて、見てかない?」
小さな子供みたいなワクワク声で哲太が言った。
「フフ。……いいよ」
笑み交じりに、しょうがないなあ、みたいな声音でわざと答えて。
あたしは涙を拭って、荷台を飛び下りた。
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