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こくり、と頷いて哲太は続けた。
「その時、お前はまだ生まれてなくてさ。真夜中なのに……でっかい腹してんのに、一番に駆けつけてくれたんだって」
光を降り注いでくる月を少し眩しそうに、目を細めてみながら。
「お袋、めちゃくちゃうれしかったって言ってた」
「……」
あたしはゆっくりとまた、月に視線を向けて。
そして哲太の真似して、ごろりと隣に寝そべった。
雑草がひんやりして気持ちいい。
大の字に腕を伸ばしたら、指先が哲太の肘に触れた。
……
「…元気してるかなあ。お父さんとお母さん」
「楽しく餅でもついてんじゃない?…あそこで」
クスッと笑って、哲太がまん丸お月様を指さす。
「それはウサギでしょ?」
低めた声で言うと。
「だってみは、ウサギじゃん」
「ウサギじゃないもん」
「ウサギだろ?……意味もなくぴょんぴょん跳ねまわってるし。いつもオドオドしてテンパってるし。ちょっとしたことで怯えてプルプル震えるし、……すぐ泣くし」
む~っ!
「だからあ!泣くのとウサギとは関係ないってっ」
「さびしがり屋で、臆病で…柔らかくて……可愛いし」
「……」
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