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つ、と伸びた手のひらを滑らせるように、哲太があたしの頬を撫でてそして。
「大丈夫だよ。……みは」
キスの余韻の、艶やかな声で。
「!」
「大丈夫」
月明かりの下、いつかのように、端正なその顔をくしゃりとさせた。
「……お前と佐久は、そうならない」
!
「できっこないさ。優勝なんて」
驚きに目を見張ったら、弾みで涙がぽろぽろとこぼれた。
「佐久やチームのみんなには悪いけど」
哲太?
「保障する。誓っていい。……って、変だなこれ。“優勝できない” 宣言?」
眉を曲げ、プハって吹き出す哲太をあたしはギュッと睨んだ。
「そんなの、分かんないじゃん」
「俺には分かるの」
「分かんないよ!だって佐久田くん本気なんだよ?哲太が居なくなってから、必死で練習積んで…本気で、優勝狙ってるのに」
軽々しく、優勝は無理なんて断言できる哲太の事が、分からなかった。
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