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再びあたしを乗せて漕ぎ出した自転車は、瞬く間に “我が家” に滑り込んだ。
途中までは、夢のような時間だった。
哲太がくれた二度目のキスの感触が、まだ唇に残されている。
ほんのり潤って、ジンジン、痺れるみたいに……まだ、
熱い。
なのに。
「お疲れ。チャリ仕舞ってくるわ。先に入って飯食っとけよ。明日早いんだろ?」
何事もなかったように涼やかな声で言ってから、こっちを見もせず裏庭の方に自転車を押してく哲太に、溜息が出た。
ポケットからそっとスマホを出して、確かめると。
……やっぱり。
佐久田くんからの着信だったんだ。
はあ。
哲太の言うとおり、早くご飯食べて、お風呂入って寝よう。
早くこの現実を離れて、夢の中へ行きたい。
夢の中ですら、王子様には会えそうもないけれど……
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