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……固まったまま、すぐには動けなかった。
もちろん、そのメールが意味することなんて、全然分からなかったけど。
ただひどく、
ひどく胸がドキドキした。
あたしの知らない哲太の世界を、覗いてしまったような気がして。
見なかった方がよかったのかもしれないって。
一瞬だけそんな、焦るような気持ちが胸を過ぎって行ったのは覚えてる。
クアラルンプールって、どこだっけ……
ううん。
今は考えないでおこう。
起こさないように、あたしはそっと、哲太の肩から手を離した。
そのまま静かに後ずさりして。
そうっと、
そうっと、
ドアを出た。───
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